歯周病(歯槽膿漏)の治療・予防
歯周病とは
歯周病(歯槽膿漏)とは、細菌によって口の中での炎症を引き起こす病気です。
特に歯と歯肉(歯茎)の間にある歯肉溝と呼ばれる部分に磨き残しなどがある場合、歯垢(プラーク)と呼ばれるネバネバとした細菌のかたまりが付着します。プラークには、数億個の菌がいるとされていて、その中でも歯周病を引き起こす菌によって、周囲が赤く炎症します。
歯垢をそのまま放置すると、硬くなり歯石となります。歯石になってしまうと、歯磨きのブラッシングだけでは除去することが難しくなります。
さらに放置すると、歯周ポケットとなり、歯を支える土台が溶けていき、最終的には、歯が抜けてしまいます。
初期評価と診断
最初に、担当医師や歯科衛生士が専門的で精密な検査を行い、現在の歯ぐきの状態を確認してから治療計画を立てます。
また、患者さんご自身で、ある程度判断することも可能です。歯周病になると、次のような症状が出ることがあります。いくつか当てはまる場合は、歯周病の可能性が考えられます。
思い当たる点がございましたら、クリニックを受診をしていただき担当医師にその旨をお伝えください。
- 歯ぐきがむずがゆい
- 歯みがきや歯間ブラシを使用すると出血する
- 口の中がネバネバする
- 歯が長くなった気がする
- 歯がしみる
- 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
- グラグラする歯がある
歯周病のステージ分類
歯周病にはおおまかに4つのステージ(段階)があります。
STAGE1 健康な歯
- 歯ぐきがしっかりと引き締まっている
- コーラルピンクの色をしていて、弾力がある
- ブラッシングなどによる出血はない
STAGE2 歯肉炎初期~中程度
- 歯ぐきがしっかりと引き締まっている
- 歯ぐきに赤いところが出てくる
- 歯を磨くと出血する
- 歯が浮いたような感じがする
- 歯ぐきにかゆみを感じる
STAGE3 歯肉炎中程度~重症
- 歯ぐきが時々赤くはれて痛む
- 歯ぐきから血や膿みがでることがある
- 口臭が気になる
- 冷たい物を食べると歯がしみる(知覚過敏)
STAGE4 歯肉炎重症
- 歯ぐきがブヨブヨして血や膿みがでる
- 歯がぐらぐらする
- 口臭がひどい
- 食べ物が噛みづらい
歯周病治療の手順と方法
スケーリング
歯石は、口腔内に存在するプラーク(細菌の塊)が硬化したものであり、歯と歯ぐきの境界線(歯肉溝)や歯の表面に堆積します。歯石は通常、歯磨きやフロスなどの通常の口腔衛生ケアでは除去することができません。スケーリングによるプロのメンテナンスで歯石や歯垢を除去します。
スケーリングは、以下の手順で行われます
①超音波スケーラーの使用:超音波スケーラーは、高周波音波を使って歯石を振動させ、歯の表面から歯石を剥がすために使用されます。同時に水を噴射し、振動によって歯石が剥離されるのを助けます。
②手用スケーラーの使用:超音波スケーラーで除去しきれなかった小さな歯石や歯ぐきの表面に付着したプラークは、手用のスケーラー(特殊な器具)を使用して除去されます。歯の表面や歯肉溝に沿ってスケーリングが行われ、歯石が取り除かれます。
③ルートプレーニング:スケーリングの一環として、歯の歯ぐきから下の部分(歯根)の表面に付着した歯石やプラークを取り除くために、歯肉から歯根面までの領域がスケーリングされます。
④洗浄:メンテナンス後、口腔内を洗浄するために水や洗浄液が使用され、除去された歯石などが取り除かれます。
定期的なメンテナンスと予防ケア
歯磨き(ブラッシング)指導
歯周病を治すためには、原因であるプラークを徹底的に除去し、歯周病になりにくい口腔内環境をつくることが重要です。
しかし、治療によって一時的に歯周病菌を除去することができても、患者さんが日常的に正しい歯磨きをしなければ、すぐにプラークがたまり、歯周病菌が再び増えてしまいます。
歯周病は「治る病気」ですが、原因となるプラークをしっかりと除去することが何よりも重要です。歯科医院での治療だけでは、完全な回復は困難です。
専門的な治療に加えて、患者さん自身が正しい歯磨き方法を身につけることが必要不可欠です。日々の忙しい時間の中で、歯磨きに時間や労力をかけるのは難しいと思われる方も多いと存じます。しかし、患者さんの日々の正しい歯磨きこそ、歯周病治療において最も大事な要素であり、歯周病治療にゴールはないと言われる理由です。
当院では、歯科衛生士による歯磨き指導をおこなっています。
多くの方は、「毎日、歯を磨いている」とお答えになられます。しかし、「磨いている」と「磨けている」では大きな違いがあり、大半の方は「磨いているけど、磨けていない」状態です。
実際に、一般の方のブラッシングでは、口腔内全体の60~70%ほどの磨き残しがあることが分かっています。この状態では、どれだけ治療をしても歯周病の改善にはつながりません。
歯磨きのコツは、ぜひ当院のスタッフにお聞きください。また、ホームページ内のコラムでも解説させていただいております。
定期メンテナンス
3ヶ月に1度くらいの頻度で、歯科医師や、歯科衛生士によるメンテナンスを行いましょう。メンテナンスでは下記4つの項目を確認しています。
- 歯ぐきの炎症がないか
- 歯垢の付着程度
- 歯と歯ぐきの間の溝の深さ(歯周ポケット)
- プラーク(歯垢)と歯石の除去
歯周病菌が少しでも残っていると、せっかく良くなったお口の環境が逆戻りしてしまうため、治療後の経過を確認させていただきます。ご自身の歯磨きでどこが磨き残しの多い部分なのかなど、ぜひプロのアドバイスを受けていただき、口腔環境の維持のお手伝いをさせていただきたく存じます。
歯周病についてまとめ
現在、中高齢者の7割以上が歯周病だと言われています。これは、昔に比べて食生活の変化やストレス社会が影響していると言われていますが、欧米に比べて、メンテナンス目的で歯科医院へ通う意識が薄いことも大きいです。余談ですが、欧米では歯の治療にかかる費用が大きいため、日々のメンテナンス目的で歯科医院に通う方が安く済みます。そのため、メンテナンスの意識も高いのです。
また、歯周病が全身疾患につながることも知られています。歯周病による炎症や細菌感染が血液を介して他の部位や臓器に広がることで、心疾患や糖尿病、誤嚥性肺炎、アルツハイマー病などの疾患との関連性が病理解剖や研究結果で明らかとなっています。口は災いの元と言いますが、万病の元でもあるのです。